公開日 2021年5月9日 最終更新日 2023年12月27日
需要が大きくスーパーマーケットでよく見かける食材の中に、公正取引が行われていなかったり、環境にとって悪影響をおよぼすとして強く問題視されている食材は色々とありますが、何か頭に浮かんだ食材はありますか?
その商品は安全な環境で作られている?Fair Trade(公正取引)について考える
この記事では便利でおいしくまだまだ需要の高い【ツナ缶】について、問題視されている理由などをまとめています。
保存が効く上、旨みの詰まったツナ缶は幅広い食材に合うとても優秀な食材ですよね。しかし安価な価格設定の裏にはそれなりの訳があるのです。
もくじ
残酷な漁?
ツナ缶の原材料はみなさんもご存知のマグロとカツオです。ツナ缶製造にあたって、そのマグロとカツオの漁が特に問題視されているのです。
たいていマグロとカツオは「まき網漁」という漁によって獲られるのですが、このまき網漁にはいくつかの問題があります。
- マグロとカツオ以外の他の魚も捕らえられてしまう混獲
- その結果の過剰漁
- 網に入った魚は体重の重い魚に押しつぶされて魚は窒息死
マグロとカツオを獲る漁法はまき網漁だけではありません。「延縄漁(はえなわりょう)」という漁法は、長い幹縄に数えきれないほどのフックが付いたもので、マグロとカツオ以外のウミドリやウミガメなど関係のない動物がかかって死んでしまうことが問題視されています。また延縄漁は長時間かかる漁法なので、漁師の負担は大きくなります。
(参考:Darf man Thunfisch noch essen?)
魚の残酷な扱い
また捕らえられた若く小さなマグロとカツオは、再び海に放たれることはなく、養殖場に行くか氷の上でゆっくりと冷やされ悶え死にそのまま売り物にされることも。そうした結果、将来卵を産んで命を増やすはずの若い魚は海から減っていくのです。
売り物にされる大きなマグロやカツオの扱いも決して良いものではありません。意識がなくなるまで叩かれたり、生きているうちに冷蔵庫に入れられてしまったりします。
海でとらえられた魚の肉は養殖のエサとしても利用されることもあり、養殖用の魚は窮屈な場所で飼われ、大きくなれば食用になるので殺されてしまいます。
(参考:10 Gründe keinen Thunfisch zu essen)
漁師さんの労働環境
問題点は決して魚に対するものだけではありません。とても買いやすい値段で売られた安いツナ缶のコストは一体どこでおさえられているのでしょう?
マグロやカツオ漁は漁法によっては長丁場になることでの長時間労働による過労、そのストレスなども問題視されているのです。
このような背景がありながらも安価なツナ缶を食べたいと思いますか?
サスティナブルなツナ缶
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世界にはサスティナビリティ、つまり持続可能性を考慮したツナ缶というものが存在します。それらのツナ缶には以下のような取り組みがあります。
- 過剰漁を行わない
- 漁獲量を最小限に抑えて生態系を保護する
- 国内法および国際基準の厳格な遵守
サスティナブルな漁法
上でも述べたようにまき網漁は混獲や過剰漁につながるのに対し、手釣り漁は他の魚はかなり少ない確率でかかるのでサスティナブルな漁法に分類されます。
まき網漁の中でも問題になっているのが、FADsという流木など海面に浮かぶものの下に集まる習性を利用した装置の利用です。これによって集まった魚たちがごそっと網で捕らえられるのです。
そのFADsという装置を使わない漁もまたサスティナブルな漁として認められているようですが、手釣り漁よりも混獲の可能性はあがります。
認証付きのシーフード
ツナ缶に限らず日本の魚の消費量では違う国と比較しても多いのは明らかです。寿司をはじめ、日本の伝統料理にはたくさんの水産物(シーフード)が使われます。
水産物に限らず、食肉も生き物の命を犠牲にしているので、需要を減らすことがまず動物の生態系を守る大きな一歩になります。
それが難しいのならばせめて、多くの犠牲を伴わないサスティナブルな食品を選びませんか?持続可能な水産物(サスティナブルなシーフード)には以下のような認証マークがついています。
【食肉】が環境に及ぼす影響を知れば【ベジタリアン・ヴィーガン】の偏見が無くせる?
MSC(Marine Stewardship Council)のエコラベル
世界で初めてタイセイヨウクロマグロ漁業でMSC漁業認証を取得した #臼福本店 が、認証取得に関わった方々への感謝を込めた食事会を #パークハイアット東京 で開きました🐟
— MSC(海洋管理協議会)日本事務所 (@MSC_Japan) November 19, 2020
ホテル内の #ニューヨークグリル では、認証クロマグロを使用したメニューが楽しめるんですよ✨ pic.twitter.com/jEbu99OXCN
海洋管理協議会「持続可能な漁業」を行う漁業者を認証する制度の運営機関。ロンドンに本部を置く。(引用:Wikipedia)
1996年に持続可能な漁業を擁護するためにWWFとユニリーバによって設立。持続可能(サスティナブル)で適切に管理された漁業で獲られた水産品に付けられるエコラベルです。(引用:MSCとは?)
世界最大規模の自然環境保護団体である国際NGO。[中略]人間の持続可能な環境づくりが活動の中心になっている。(引用:Wikipedia)
ASC(aquaculture Stewardship Council)のエコラベル
(認証制度)ASC 水産養殖管理協議会の宣言です。#サス宣 pic.twitter.com/DryZWkAQMi
— サステナブル・ライフスタイル宣言 (@sussen2020) October 28, 2020
水産養殖管理協議会の認証制度。WWFとIDHの支援のもと2010年にできた非営利団体。(引用:ASCとは?)
MSCの養殖版。養殖水産業において養殖場建設における環境破壊・海洋環境の汚染・天然魚の過剰使用・養殖魚のもつ病気を海に持ち込む、逃げだすことで生態系に影響を及ぼすこと・劣悪な労働環境などがない責任ある養殖水産物であることが分かるようにラベルによって消費者に知らせるもの。
Dolphinsafe(ドルフィンセーフ)認証
イルカとカツオ・マグロが生活する場所はたいてい違うので、実際にイルカがカツオ・マグロの漁に巻き込まれたり、被害に会うという例はものすごく稀であるそうです。
しかしメキシコの東太平洋のイエローフィンマグロに限ってはイルカと同じ地域で一緒に泳ぐので関係があるのです。
北東太平洋ではたいていまき網漁によってカツオとマグロが獲られるため、長年イルカの漁獲量も多く問題になっていましたが、対策をされるようになってからは例えば、間違ってイルカが網に入ってしまった場合に備えてダイバーを用意したりすることで、それによって死んでしまうイルカの数を99%も減少させたそうです。
持続可能(サスティナブル)な水産物
もちろん魚は命ある生き物であり、生きる世界があり、そこは人間が踏み込みべき領域ではないことは明らかです。
そんな自然界のサイクルを守るには需要を減らすことが一番の選択ですが、その他にも選択肢を与えるならば、持続可能な水産物(サスティナブルなシーフード)を選ぶことで自然界の流れを取り乱さずに、持続可能(サスティナブル)な漁業が広がることにつながります。
目的以外の他の生き物を犠牲にする漁業は自然界の流れを乱し、いずれ海に住む生き物を消滅させることにつながります。
今度お買い物をするときにぜひMSCやASCの認証マークをチェックしてみてください!